島根大学医学部に赴任させていただき、3年目に突入しました。2019年7月に赴任した当時と今では日本も世界も景色が変わってしまいました。新型コロナウイルスで亡くなられた方、そのご家族の方などたくさんいらっしゃると思います。しかし同時に、分子生物学手法を用いた新しい機序のワクチンなど、医科学の力を実感した2年間でもありました。

しかし残念ながら、医科学分野では日本は先進諸国のみならず近隣諸国の中でも後塵を拝する様になってきています。ワクチンも日本製のものはなかなか登場しません。またハイプロファイルの医科学論文も、日本からのものはほとんど見なくなりました。この様な時に、どうしても我々のコミュニティーでは「日本は規制が厳しいから」とか「日本人はルールをきっちり守るので」といった声を聞くことがあります。それを全否定しませんが、世界ではその様な自己憐憫は全く意味がありません。世界では結果が全てであり、結果を残した人のみがそのプロセスや努力を語れるのです。規制・ルールが厳しくなったことに「出来ない理由」を探し始めることは自分たち自身の現状維持のみならず、相対的な退化を意味しています。我々は如何なる逆境においても。その圧力に力を得て進化を遂げなければなりません。「向かい風の時こそ、凧は最も高く上がる」、昔イギリスの首相であったチャーチルが言った言葉ですが、困難ではあってもpressureを受けているときにこそ一歩踏み出し、我々自身の成長につなげる必要があります。

この1年半は新型コロナで診療はもちろん、教育、研究、学会活動など想像できなかった様々チャレンジの毎日でした。そんな中、2020年11月には第63回日本甲状腺学会学術集会 にて大谷はづき先生がロシュ若手奨励賞(YIA)を、2021年4月には第94回日本内分泌学会学術集会にて川北恵美先生が若手研究奨励賞(YIA)を、6月には第64回日本腎臓学会学術集会にて順天堂大学からの国内留学生である熊谷麻子先生が優秀演題賞を受賞してくれました。この様な全国学会で我々の医局メンバーの研究成果が栄ある受賞につながった事は、我々の診療科・研究チームにとって多変な名誉であり、彼らの努力を讃えるとともに、彼らの更なる研鑽とチーム内での切磋琢磨に期待するところです。すでに世界への扉は開けていますので、より高みを目指していただきたいと思います。

新型コロナもワクチン接種が拡大し今後もその有効性を保てれば早晩社会は落ち着きを取り戻すでしょう。いつまでも新型コロナに負けているわけにはいきません。"Post-coronavirus world"に向けた準備を行っていく必要があります。

 

2021年7月1日 金﨑啓造