教授挨拶島根大学医学部 内科学講座内科学第一 教授 金﨑 啓造

 

2019年7月より内科学講座(内科学第一)を担当させていただいております、金﨑啓造と申します。私は1996年に滋賀医科大学卒業、研修・大学院を経てハーバード大学留学後の2010年からは金沢医科大学糖尿病・内分泌内科学にて古家大祐教授のもと診療・教育・研究に携わってまいりました。

私は糖尿病合併症、特に糖尿病の腎臓合併症(糖尿病腎症、糖尿病性腎臓病)制御を専門にしております。世界で約4億3千万人が糖尿病に罹患し、2045年には6億人以上にも達すると考えられます。日本でも約2000万人が糖尿病に罹患していると考えられ、また、末期腎不全の結果、人工透析に新規導入される症例の約44%が糖尿病を原因としております。糖尿病により健康を害する直接の原因は糖尿病合併症であり、我々は、1)糖尿病合併症の発症を予防する、2)発症した合併症の進展を抑止する、を使命と考えています。その対策は医学的・社会的に重要課題ですが、我々は魔法の薬や奇跡の治療法を用いることができるわけではなく、地道な診療努力と優れた医療人の育成が欠かせません。また糖尿病早期発見と合併症抑制を含めた糖尿病対策には地域の先生方や行政とともにevidenceに基づいた三位一体の取り組みが必須であり実践します。また、その他内分泌疾患(甲状腺、副腎、下垂体疾患など)や代謝疾患(栄養、電解質、ビタミン・微量元素代謝異常など)には、高頻度のものから希少なものまで様々な疾患がありますが、これらの疾患が患者さんの健康を知らないうちに損ねていることも多く、個々の症例に適切な診断・治療介入を行って参ります

今後の研究テーマとして、腎臓の線維化制御・尿細管代謝異常を標的とした糖尿病腎症に関する研究はもちろん、留学時代から取り組んできた妊娠高血圧腎症の研究も継続していきます。糖尿病の死因第一位である癌の研究、特に高血糖や抗糖尿病薬が癌の生物学的特徴にもたらす意義についても探求して参ります。また、内分泌ホルモン恒常性不全がもたらす多臓器間ネットワークへの影響に関しては、古典的内分泌分子のみならず新たな視点から捉えて研究を発展させたいと考えています。さらに、当科が長年築きあげてきた骨代謝の研究はさらに深淵に迫り世界をリードしていきたいと思います。

若い先生方・学生諸君とともに多彩な事にチャレンジし、必ずや島根から日本全国・世界に向けてオリジナリティの高い情報を発信して参ります。

 

内科学講座(内科学第一)の沿革

当講座は、京都帝国大学医学部をご卒業後、同大学第二内科で血液学と内分泌学の研鑽を積まれた初代教授野手信哉先生が、1976年4月に開講された島根医科大学医学部第一内科学講座に端を発します。当時島根県立中央病院長であった野手先生は、後の島根医科大学初代学長となる深瀬政市京都大学教授と協力し、地元関係者や県立中央病院スタッフとの協力を得るなど、当講座のみならず本学や附属病院の設立に尽力され、島根県の近代医療の基盤を構築されました。

1987年4月には、京都大学医学部第二内科より加藤 讓先生が第二代教授として着任されました。間脳下垂体機能障害に関する総合的な研究を発展させるとともに、当科で研鑽を積んだ教室員を派遣できる関連病院を整備し、島根県内の内分泌代謝疾患、血液疾患の診療の向上に貢献されました。

2004年8月に神戸大学大学院医学系研究科応用分子医学講座内分泌代謝・神経・血液腫瘍内科学より杉本利嗣先生が第三代教授として着任されました。島根大学との大学統合、法人化、診療科名称の改変に伴い、腫瘍・血液疾患部門の診療を分離し、主たる診療科は内分泌代謝内科となりました。杉本先生は生活習慣病関連骨粗鬆症の疾患概念を提唱され、副甲状腺・骨代謝診療と研究の新たな展開に寄与されました。

これらの伝統を基盤とし、糖尿病・糖尿病合併症制御を大きな柱として新たな診療・教育・研究体制を構築して参ります。