実際に診療している患者さんに承諾を得て、血液検査や身体所見をもとに、予防・診断・治療法の安全性や有効性を検討します。医学統計的手法を用いて、

一例

  • 島根県における高齢者血液腫瘍の予後調査
  • 悪性リンパ腫中枢神経浸潤の予後調査
  • 骨髄異形成症候群における鉄代謝異常
  • ボルテゾミブ関連末梢神経障害の評価法と予防の確立
  • 血管内皮機能検査と血糖コントロールの関連の検討
  • 糖尿病合併症と消化器症状の関連の検討
  • 骨代謝と糖代謝、動脈硬化との関連性についての検討

 

研究室   研究室
     
毎週月曜日に研究カンファレスを行い、
研究について悩んでいることや、
困っていることを話し合います。
  また、2・3ヶ月に一度、
研究成果を研究発表して発表し、
実験結果をまとめます。

 

詳しい内容についてはこちらをご覧ください。

 

 

臨床研究のすすめ

「臨床研究」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?日常臨床の「気づき」を発端に、疾病の有無に関連する因子を観察研究で同定し、その因子を除去することで疾病の予防・治癒が可能である因果関係を証明する介入研究の2つの要素で構成される研究です。まだ認識されていない疾病が存在するのではないか、日々行う診療が、患者さんの健康増進に寄与しているかどうかと疑問が生じたとき、臨床研究を行うことができれば。自ら統計学的に検証することが可能であり、臨床医が兼ね備えていることが望ましい能力と考えます。 

本邦には回顧すべき事例があります。ビタミンB1欠乏に起因する脚気は、昭和30年代まで結核とならぶ本邦で罹患率の高い疾患の双璧でした。東京慈恵医科大学の創始者である高木兼寛先生は、海軍軍医任官中に、軍艦毎に脚気の発症率が異なり、下士官以下に発症し、上官にはほとんどないことを見いだしました。低蛋白質の食事に原因があると考え、ある軍艦の兵食に「海軍カレー」など蛋白質含有量が多い洋食を採用し、従来食の他艦と比較したところ、遠洋航海中の脚気の発症率のみならず死亡率も低下することを実証しました。主食を白米から蛋白質の多い玄米に変更する兵食改革を行った海軍では、明治中期には脚気の罹患者・死亡者を沈静化することに成功しています。

優れた観察眼と科学的な検証法により、世界に先駆けて脚気が麦食により予防可能なことが本邦で実証されました。しかし、軍食を含め広く普及することなく、戦後ビタミンB1誘導体が製剤化され、経済が回復し栄養摂取状態が改善するまで、多くの国民が脚気にさいなまれ続けました。

現代的に言うと、「麦食で全死亡率が低下する」という、hard endpointのめざましい改善効果を示す実証データが得られたのにもかかわらず、実践できなかったのはなぜでしょうか。当時は必須微量栄養素であるビタミンの概念はなく、合理性のある機序(学説)が存在しなかったことや、おいしくないため麦食採用を躊躇したことが考えられます。しかし、おそらくは、Evidence-based medicine: EBM(科学的根拠に基づく医療)の基盤となる臨床研究について習熟していなかったため、意義が理解できず、極めて有益な結果が得られる方法を選択する決断ができなかったことに原因があるのではないかと考えます。食品中のコレステロール含有量と血清中のコレステロール値に関連がないことが最近になって判明したように、科学的とは言えない医療の提供は、決して過去の問題ではないことを傍証しています。

EBMに基づく医療は、標準的な医療提供水準と考えられていますが、EBMの習得は卒後臨床研修には組み込まれていません。その習得にはEBMの基盤となる臨床研究に取り組むことが最良の方法と考えます。臨床研究を通じて、データの信頼性、解釈、導かれる結論の妥当性と意義、その限界について理解が深まり、多角的な考察の上、自ら判断し医療提供を行うことが可能になると思います。また、臨床経験から着想を得て行った自らの臨床研究の成果は、どのような結果であれ、医療に適用することにより、患者さんに利益を還元することが可能です。臨床医としてレベルアップを望み、患者さんの健康増進にもっと役立ちたいと考えている先生方は、ぜひ我々に相談を持ちかけてみてください。皆さんの成長のお手伝いができることを我々は楽しみにしています。